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石綿の調査記録、重説で説明するのは有無だけではない

公開
2026年9月27日
法令・制度の確認
2026年9月27日 時点

解体や改修の工事現場では、仮囲いや防音シートに「石綿の事前調査結果」の掲示板が出ています。重要事項説明にも石綿の欄があり、どちらも石綿の調査の話に見えます。ただ、この2つは別の法令が別の人に課している義務です。

重説の石綿の欄は「記録の有無を照会して伝えれば足りる」と覚えられがちです。調査を行う義務が無いのはそのとおりですが、記録があるときに説明する中身は有無だけではありません。重説で書くことと、工事の側で動いていることを分けて整理します。

重説の欄と工事の事前調査は、根拠が別です

重説の根拠は宅地建物取引業法施行規則16条の4の3第4号です。建物の売買・交換・貸借のいずれでも説明の対象になります。

当該建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容

一方、工事現場の掲示は、解体・改修の工事に先立つ事前調査の仕組みの一部です。大気汚染防止法と石綿障害予防規則(石綿則)の2本が、ほぼ同じ形の義務を並べて置いています。

項目重説の石綿の欄工事の事前調査
根拠宅地建物取引業法施行規則16条の4の3第4号大気汚染防止法18条の15、石綿則3条
義務を負う者宅建業者(説明する義務)工事の元請業者・自主施工者(調査する義務)
調査そのもの義務付けられていない解体・改造・補修の工事の前に必ず行う
調べる範囲記録にある範囲工事に係る部分
記録の行き先買主・借主への説明発注者への書面説明、現場の掲示、一定規模以上は知事と労働基準監督署長への報告

記録があれば、5つの項目を説明します

国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、「その内容」として説明する項目を挙げています。調査の実施機関、調査の範囲、調査年月日、石綿の使用の有無、石綿の使用の箇所の5つです。欄の書き方は次の順で進めます。

  1. 売主・所有者に、調査の記録があるかを照会します。必要に応じて、管理組合・管理業者・施工会社にも問い合わせます。
  2. 記録が見つかったら、5つの項目を拾い出します。記録から読み取れない項目は、売主等に補足の告知を求めます。それでも分からなければ、分からない旨を説明すれば足りるとされています。
  3. 記録から石綿の使用の有無が容易に確認できる場合は、記録そのものを別添してもかまいません。
  4. 売主から出された記録を説明するときは、売主等の責任の下で行われた調査であることを明らかにします。建物全体を調べたものでなければ、調べた範囲に限りがあることも明らかにします。
  5. 記録が無い、または見つからない場合は、照会したことをもって調査義務を果たしたことになります。欄には「無」とだけ書かず、誰に照会してどうだったかを残しておきます。

同じ考え方は、調査の実施自体を宅建業者に義務付けるものではないことに留意するよう求めています。重説のために新たに調査を依頼する義務は、この欄からは出てきません。

防音シートの掲示は、工事の元請業者が出すものです

工事現場の掲示には、根拠が2つあります。大気汚染防止法18条の15第5項は、元請業者または自主施工者に、調査の結果などを「公衆に見やすいように」掲示するよう求めています。石綿則3条8項は、作業場の見やすい箇所への掲示を事業者に求めています。前者は周辺の住民向け、後者は現場で働く人向けです。

根拠掲示する者掲示する事項
大気汚染防止法18条の15第5項、同法施行規則16条の9・16条の10元請業者・自主施工者元請業者等の氏名・住所、調査を終えた日、調査の方法、特定工事に当たるときは特定建築材料(石綿を含む一定の建材)の種類。A3以上の掲示板で出す
石綿則3条8項事業者調査を終えた日、調べた部分と材料ごとの石綿の有無の概要

大気汚染防止法の掲示には、工事の規模による下限が条文上置かれていません。後で触れる報告の義務とは、ここが違います。売主や宅建業者が掲示を出す場面は、この仕組みの中にはありません。

調査を頼む側に回るのは、工事を発注するときです

事前調査の義務は、解体・改造・補修の工事の元請業者にあります。この条文の義務は、建物を売る・貸すこと自体には掛かっていません。宅建業者や売主が関わるのは、自分が工事の発注者になる場面です。買い取った中古住宅を改修してから売る、更地にして引き渡すために建物を解体する、といった場合です。

工程誰の義務か根拠
設計図書と目視による調査。一定の知識を有する者として大臣が定める者に行わせる。分からなければ分析調査元請業者(石綿則は事業者)大気汚染防止法18条の15第1項、同法施行規則16条の5、石綿則3条
調査の結果を書面で発注者に説明する元請業者大気汚染防止法18条の15第1項
調査の費用を適正に負担するなどして協力する発注者同法18条の15第2項
石綿の使用状況を請負人に通知するよう努め、調査が適切に行われるよう配慮する発注者石綿則8条
調査の結果を知事と労働基準監督署長に報告する。建築物の解体は床面積80平方メートル以上、改修は請負代金100万円以上など元請業者(石綿則は事業者)同法18条の15第6項、同法施行規則16条の11、石綿則4条の2
特定粉じんを多量に発生させるおそれがある建材として政令で定めるものの除去などを伴う工事は、作業開始の14日前までに知事に届け出る発注者同法18条の17

平成18年9月1日以後に着工した建築物は、その着工日を設計図書などで確かめる方法で調査を済ませられます(同法施行規則16条の5第1号ただし書、石綿則3条3項3号)。発注者は、調査や費用、工期について法令の遵守を妨げるような条件を付けないよう配慮することも求められています(石綿則9条)。

つまずきやすいのは「範囲」です

売主の手元にある記録が、以前の改修工事のときの事前調査の記録であることがあります。石綿則3条1項は、調査の対象を解体等の作業に係る部分に限っています。浴室だけを直した工事の記録は、浴室の調査の記録です。5つの項目のうち「範囲」を落とすと、建物全体に石綿が無いと確かめたかのように読まれます。

事前調査の記録を保存する義務があるのは元請業者で、期間は3年です(大気汚染防止法18条の15第3項、同法施行規則16条の8、石綿則3条7項)。発注者には書面で説明されますが、売主が控えを持ち続けているとは限りません。照会先が施工会社まで伸びるのは、この保存の仕組みのためです。

照会した相手と日付を控え、記録から5つの項目を拾い出して欄の原案にまとめる工程は、手元から離しても形が崩れません。離せないのは、記録の範囲の限りをどう伝えるかの判断と、35条書面への記名・説明です。工事の事前調査は元請業者の、届出は発注者の仕事として、重説とは別に動きます。

確かめられたこと・確かめていないこと

確かめられたのは、宅地建物取引業法施行規則16条の4の3第4号が建物の売買・交換・貸借で石綿の調査記録の内容を説明事項としていること、解釈・運用の考え方が説明する5項目・照会の範囲・別添・調査義務の不存在を示していることです。事前調査・書面説明・掲示・報告・届出の主体と要件は、大気汚染防止法、同法施行規則、石綿則の現行条文で読みました。

確かめていないことも書いておきます。工事の事前調査の記録を、重説でいう「調査の結果の記録」としてそのまま扱ってよいかは、解釈・運用の考え方に明示が無く、この記事では判断していません。事前調査を有資格者に行わせる義務が、建築物・工作物それぞれいつの工事から掛かっているかは、附則を規定ごとに突き合わせておらず、日付を書いていません。石綿を含む建物の取引で、説明以外にどのような責任が問われうるかも扱っていません。

参照した一次情報

上の確認日は、この記事を書いた時点で制度・様式を確かめた日です。 以後の改正までは追い切れていない場合があります。実務でお使いの際は、 必ず出典元の最新版をご確認ください。