免許取消しのあと、原因の役員が辞めれば取り直せるか
- 公開
- 2026年10月3日
- 法令・制度の確認
- 2026年10月3日 時点
役員や支店長の不祥事で免許が取り消されたとき、「その人が辞めれば、会社は免許を受け直せるのか」という問いが出てきます。免許を取り消されたら一律に5年は受けられない、と覚えられていることが多いのですが、条文はそうなっていません。分かれ目は、取消しが宅地建物取引業法66条1項のどの号によるものかです。
欠格は二つの経路で付く
免許の基準は5条1項にあり、該当すれば免許をしてはならない事由が1号から15号まで並んでいます。このうち、取り消された業者に関わるのは二つの経路です。
一つは業者自身が欠格者になる経路です。5条1項2号は次のように定めています。
第六十六条第一項第八号又は第九号に該当することにより免許を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者(当該免許を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前六十日以内に当該法人の役員……であつた者で当該取消しの日から五年を経過しないものを含む。)
もう一つは欠格者を抱えていることで免許を受けられない経路です。5条1項12号は「法人でその役員又は政令で定める使用人のうちに第一号から第十号までのいずれかに該当する者のあるもの」を、13号は個人業者の政令で定める使用人について同じことを定めています。政令で定める使用人は、事務所の代表者(支店長・営業所長など)です(施行令2条の2)。
取消しの側は66条1項にあり、該当すれば取り消さなければならない事由が9号まで並びます。3号は法人の役員または政令で定める使用人が5条1項1号から7号まで・10号に該当するに至ったとき、4号は個人業者の政令で定める使用人について同じ場合です。8号は不正の手段による免許の取得、9号は指示処分の事由に該当して情状が特に重いときと、業務停止処分に違反したときです。
取消しの根拠で分ける
二つの経路を66条1項の号に当てはめると、次のようになります。
| 取消しの根拠 | 業者自身の5年の欠格 | 原因の人が退任・退社したあと |
|---|---|---|
| 66条1項3号(法人の役員・政令で定める使用人が欠格事由に該当) | 付かない | 12号の欠格は、その人を抱えていることから来ています。外れれば、条文上は12号の障害がなくなります |
| 66条1項4号(個人業者の政令で定める使用人が欠格事由に該当) | 付かない | 13号について同じです |
| 66条1項8号・9号(不正取得・情状が特に重い・業務停止処分違反) | 付く(5条1項2号) | 業者そのものが取消しの日から5年の欠格者です。役員を入れ替えても解けません |
3号・4号の取消しで欠格を背負っているのは、原因になった人のほうです。たとえば役員が拘禁刑に処せられた場合、5年の期間は5条1項5号によりその人に付いていて、会社に付いているわけではありません。8号・9号の取消しでは向きが逆になり、会社自身に5年が付きます。法人の場合は、聴聞の公示の日前60日以内に役員だった人にも同じ5年が付きます。
確かめる順は次のとおりです。
- 取消処分の通知書で、根拠となった66条1項の号を確かめます。
- 8号・9号なら、業者自身が5年の欠格者になっています。あわせて、聴聞の公示の日と、その前60日以内に役員だった人を洗い出します。
- 3号・4号なら、原因の人が役員・事務所の代表者から外れているかを、登記や変更の届出の上で確かめます。
- どちらの場合も、5条1項のほかの号(とくに8号・9号)に当たらないかを別に確かめます。
つまずく点
「役員」は肩書で決まらない
5条1項2号の括弧書きは、役員を業務を執行する社員・取締役・執行役またはこれらに準ずる者とし、さらに相談役、顧問、その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、同等以上の支配力を有すると認められる者を含むとしています。取締役を退いて顧問として残る形では、役員から外れたことにならない場合があります。この定義は12号にも及びます。
処分の前に廃業しても逃れられない
8号・9号に該当するとして聴聞の期日と場所が公示されたあと、処分の日(処分をしないと決めた日)までに解散や廃業の届出(11条1項4号・5号)をした者は、相当の理由がある場合を除き、届出の日から5年の欠格者になります(5条1項3号)。同じ期間に合併で消滅した法人や、解散・廃業を届け出た法人の、公示の日前60日以内の役員も同じです(4号)。
新しい法人を作っても止まる
8号・9号の取消しで5年の欠格を負った役員が新しい法人の役員に就けば、その法人は12号で免許を受けられません。顔ぶれを変えずに器だけを替える形は、条文の上で塞がれています。
政令で定める使用人は60日の括弧書きの文言に入っていない
5条1項2号の括弧書きが5年を延ばしているのは「役員であつた者」で、事務所の代表者は文言に入っていません。ただし、その人自身が刑罰などでほかの号に当たっていれば、そちらで欠格になります。文言に入っていないことは、問題がないことを意味しません。
欠格が解けても審査は残る
3号・4号の取消しで原因の人が外れたとしても、5条1項8号(申請前5年以内に宅地建物取引業に関し不正または著しく不当な行為をした者)と9号(不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者)は、取消しの根拠とは別に審査されます。申請書や添付書類に重要な事項の虚偽記載・記載漏れがあれば、それだけで免許はされません(5条1項柱書)。
まず通知書の号を見る
取消しのあとに受け直せるかどうかは、通知書に書かれた66条1項の号で、条文上の道筋が大きく変わります。「5年は無理」と思い込んで受け直せる機会を逃すことも、「人を替えたから大丈夫」と思い込んで申請し、免許されないことも起こりえます。個別の当てはめは事実関係によって変わるため、申請の前に、通知書を持って免許行政庁の窓口か専門家に確かめるのが確実です。
確かめられたこと・確かめていないこと
- 確かめたこと ―― 宅地建物取引業法5条1項各号、11条1項、66条1項各号と、施行令2条の2は、確認日時点の現行条文を e-Gov 法令検索で取り出して確認しました。
- 確かめていないこと ―― 66条1項3号・4号に当たる人が、取消処分の前に退任・退社した場合に取消しが行われるかどうかの運用には当たっていません。
- 確かめていないこと ―― 再申請の際に、原因の人が外れたことを免許行政庁がどの書類で確かめるかなど、審査の実務と、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の該当箇所には当たっていません。
- 確かめていないこと ―― 「同等以上の支配力を有する」と認められる範囲について、具体的な判断の基準や事例には当たっていません。
- この記事は条文の配置を一般的に整理したもので、個別の事案についての判断ではありません。
参照した一次情報
上の確認日は、この記事を書いた時点で制度・様式を確かめた日です。 以後の改正までは追い切れていない場合があります。実務でお使いの際は、 必ず出典元の最新版をご確認ください。