法令に基づく制限の調べ方 ── 一覧の外側をどう拾うか
- 公開
- 2026年8月29日
- 更新
- 2026年9月21日
- 法令・制度の確認
- 2026年8月29日 時点
重要事項説明書には「その他の法令に基づく制限」という欄があります。都市計画法と建築基準法の制限を書く欄が別に立っていて、そこに収まらないものを受ける欄です。ここを埋めるとき、法令名の一覧を上から当たっていく方法があります。ただ、一覧を当たり切っても、この欄が閉じたことにはなりません。
範囲を決めているのは一覧ではなく、宅地建物取引業法35条1項2号と、そこから降りる政令のほうだからです。まず、その構造を見ます。
定めは三段に分かれています
35条1項2号は、説明すべき事項をこう定めています。
都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(略)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
この「政令で定めるもの」が宅地建物取引業法施行令3条です。限定列挙になっていて、売買・交換(条文では「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約」)については、64の号に法律名と条項が並びます。実務で言う一覧の正体は、この64号です。
見落としやすいのは、号ではなく1項の柱書きに入っている括弧書きのほうです。
次に掲げる法律の規定(これらの規定に基づく命令及び条例の規定を含む。)に基づく制限
条例がすべて欄の外にあるわけではありません。法律の委任を受けて定められた条例は、委任元の法律が列挙されていれば、この括弧書きで内側に入ります。外に落ちるのは、法律の委任によらない条例のほうです。条例かどうかではなく、委任があるかどうかで入口が分かれます。
もう一つ、範囲は契約の別で変わります。様式の欄は同じ顔をしていますが、当たる先が違います。
| 契約の別 | 根拠 | 説明の対象 |
|---|---|---|
| 売買・交換 | 令3条1項 | 64号の列挙すべて |
| 宅地の貸借 | 令3条2項 | 1項のうち、都市計画法52条の3ほか一部を除いたもの |
| 建物の貸借 | 令3条3項 | 新住宅市街地開発法32条1項、新都市基盤整備法51条1項、流通業務市街地の整備に関する法律38条1項の3つ |
建物の貸借で政令が名指ししている制限は、3つだけです。ここに売買と同じ一覧を当てると、書かなくてよいものを書くことになります。
調べる順序
- 契約の別を先に決めます。売買か、宅地の貸借か、建物の貸借かで、令3条のどの項を見るかが変わります。
- 令3条で号を絞ります。所在・地目・区域区分から、当たりうる法律だけを残します。
- 法令ごとの輪郭を掴みます。国土交通省が64の法令について概要一覧を公開していて、法令名から制度の中身に降りられます。
- 自治体の窓口で確定を取ります。所管は法令ごとに分かれます。文京区が公開している案内では、建築基準法は都市計画課と建築指導課、道路法は土木部管理課と都の建設局、という具合に、一つの物件でも行き先が割れます。
- 一覧の外側を聞きます。「この土地に、条例や要綱で別に掛かっているものはありますか」という問いは、令3条の号からは出てきません。窓口で聞く以外の入口がありません。
- 聞いた相手と日付を残します。後で区域や様式が動いたとき、どこまでが確かめた範囲かを示せるのは、この記録だけです。「該当なし」だった法令も同じです。書面の上では、聞いたうえで無かったのか、聞かずに空けたのかの区別がつきません。
記録は、窓口ごとに次の4つを分けて残すと、後から読む人が検算できます。
| 残すもの | 分ける理由 |
|---|---|
| 窓口・日付・方法 | 課の名前、確認した日、来庁か電話か。区域や条例が動いたあとで、どの時点の答えかを示せるのはここだけです。 |
| 聞いたこと | 問いの文面そのもの。答えの範囲は問いで決まります。問いに入れていない法令について「なし」と言われたことにはなりません。 |
| 回答(そのまま) | 要約すると、答えた側の言葉と書き手の読み替えが混ざります。 |
| 当てはめに必要な事実 | 回答を欄に落とすときの読み替えを、回答とは別に置きます。読み替えを誤っても、回答までは遡れます。 |
要 -KANAME- が公開している納品物の見本では、照会ごとにこの4つを残して番号を振り、重要事項説明書原案の「該当なし」の行にもその番号を付けています。
つまずく点
| つまずき方 | 何が起きるか |
|---|---|
| 地図サービスで足りると考える | 提供する側が範囲を限っています。名古屋市は「本サービスは全ての都市計画および土地利用規制を表示するものではありません」、松戸市は「インターネット上の情報は参考情報ですので、最終的な確認は、都市計画課の窓口で図面をご覧いただきますようお願いいたします」と案内しています。 |
| 境界付近を図面で読む | 参考図には作図上の誤差が含まれます。用途地域や区域の境が敷地を横切る形になっているとき、図の上では決まりません。 |
| 一覧に載る法律だけを当たる | 法律の委任によらない条例・要綱・指導基準は、令3条の号には現れません。横断的な一覧もないため、自治体ごとに聞き出す形になります。 |
| 貸借に売買の一覧を当てる | 令3条2項・3項で範囲が絞られています。特に建物の貸借は3つで、過剰な記載のほうが起きます。 |
この4つに共通しているのは、机上で閉じられる工程と、窓口でしか閉じない工程が混ざっていることです。号を絞るところまでは条文で進みますが、その先は動きません。
一覧の外側は、35条ではなく47条の側で効きます
令3条に載っていない制限は、35条1項2号の説明義務の対象からは外れます。ただ、そこで話が終わるわけではありません。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、35条1項の各号についてこう述べています。
本項各号に掲げる事項は、宅地建物取引業者がその相手方又は依頼者に説明すべき事項のうち最小限の事項を規定したものであり、これらの事項以外にも場合によっては説明を要する重要事項があり得る。
加えて47条1号は、契約の締結について勧誘をするに際して、一定の事項について故意に事実を告げない行為を禁じています。その事項にはニとして、宅地又は建物の「現在若しくは将来の利用の制限」のうち相手方等の判断に重要な影響を及ぼすものが挙がっています。一覧に無いという理由だけで、告げなくてよいことになるわけではありません。一覧は最低ラインを引いたもので、上限を引いたものではありません。
どこまでを説明するかの判断そのものは、取引に当たる宅地建物取引業者と宅地建物取引士に残ります。調査の側でできるのは、その判断の材料を欠けたまま渡さないことです。
この工程のうち、令3条で号を絞る作業と、窓口を回って根拠と確認日をそろえる作業は、手元から離しても形が崩れません。離せないのは、集まった材料のどれを重要事項として説明するかの判断と、35条書面への記名・説明のほうです。遠方の物件でこの線を引くと、往復にかかる部分だけを外へ出して、判断は手元に残せます。
確かめられたこと・確かめていないこと
確かめられたのは3つです。令3条1項の号数が64であること、3項が名指しする規定が3つであること、そして1項の柱書きが命令と条例を括弧書きで含めていること。いずれもe-Gov法令検索の現行条文で数えました。「最小限の事項」の一文は、解釈・運用の考え方の第35条第1項関係にあります。
確かめていないことも書いておきます。法律の委任によらない条例が全国でどれだけ置かれているかは、調べていません。自治体ごとに名称も所管も異なり、横断的な出典を見つけられませんでした。この記事が言えるのは「そこへ聞きに行く必要がある」というところまでです。所管課の分かれ方として挙げたのも一つの区の例で、他の自治体で同じ割り方になるとは限りません。なお令3条の号数は改正で動きますので、冒頭の確認日より後については条文そのものを見てください。
参照した一次情報
- 宅地建物取引業法 第35条第1項第2号・第47条第1号(e-Gov法令検索)
- 宅地建物取引業法施行令 第3条(e-Gov法令検索)
- 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 令和8年4月1日施行版(国土交通省)
- 重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧(国土交通省)
- 不動産調査(重要事項説明における法令に基づく制限)の調査方法・担当部署案内(文京区)
- 都市計画情報提供サービス(インターネット)のご案内(名古屋市)
- 都市計画情報のインターネット提供サービスについて(松戸市)
上の確認日は、この記事を書いた時点で制度・様式を確かめた日です。 以後の改正までは追い切れていない場合があります。実務でお使いの際は、 必ず出典元の最新版をご確認ください。